はじめに
今日は皆さんが病院で受けられたことがあるCT、MRI、レントゲン検査について説明させていただきます。私は放射線技師として洛和会丸太町病院に勤めて6年目、今はMRIの責任者を務めています。
この仕事をしていると、皆さんから放射線についてよく質問を受けます。でも「被爆したらがんになるのではないか」とか、マイナスイメージの質問が多いです。日本は原爆の被爆国ですから、放射線に対する意識は非常に高く、その表れだと思います。でも病気を見つけるためには、レントゲンやCTできれいな画像が必要です。まず、放射線とは何かという話をします。
放射線って何?
実は放射線は光と同じようなものです。身近なところでは、太陽の光にも含まれています。これを自然放射線といい、普段、生活しているだけでも放射線は浴びているのです。また、畑からの作物にも微量ながら放射線が含まれています。私たちが生活しているだけで浴びる自然放射線は、年間2.4ミリシーベルトになります。しかし、これは人体にすぐに害を及ぼすものではありません。
放射線は次の図のように区別されます。X(エックス)線は病院の検査に使われていますし、ガンマ線はがんなどの治療に使っています。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
身近に使われている放射線
放射線はいろいろな用途に使われています。病院ではレントゲン検査のほか、輸血による血液の減菌・殺菌にも使っています。
そのほか、ジャガイモの芽止めやラドン温泉、空港の異物発見器など産業分野でも使われています。放射線は身近な存在ということが、お分かりいただけたと思います。
放射線検査の種類は
放射線を使った検査はたくさんあります。
- (1)レントゲン検査
- (2)CT検査
- (3)TV検査
- (4)RI検査
- (5)PET-CT検査
- (6)カテーテル検査
- (7)放射線治療
- (8)マンモグラフィー(乳房撮影)
- (9)骨密度検査
いずれも放射線を用いて人の体の中の構造を画像化する検査です。人体を透過したエックス線の量の差によって画像になります。放射線検査とは、光を使った影絵に近いものです。私の働く洛和会丸太町病院では、(1)から(3)と(6)、骨の年齢を知る(9)を実施しています。
エックス線単純検査とは
エックス線単純検査(レントゲン検査)は最も簡易な検査です。外部からは分からない内部の情報が得られ、胸部なら肺炎、腹部なら結石などを探し出せます。また、骨の状態を見るのにも用いられます。
検査法として最も歴史があり、診断が確立されており、最初の体内情報を得るために最適の検査です。レントゲン撮影で異常が疑われる場合には、CTやMRI検査を受けるのが一般的です。
CT検査とは
CT検査はエックス線が360度、体の周りを回転し、放射線を使った輪切りの画像が撮れます。3D画像を作ることで骨折箇所が分かりやすくなります。
CT検査は、骨の病気(骨折、骨腫瘍)などに優れています。短時間での撮影が可能で、造影剤を用いて撮影すると、図のように冠動脈や大動脈の写真を撮ることができます。
MRI検査の特徴は
MRI検査は、電磁波と磁石の力を使った検査です。放射線は用いていません。水分が多い物質(筋肉や靭帯など)の検査に優れており、いろんな角度の写真が撮れます。撮影のできる人が限られており、長時間かけて撮影します。
頭部疾患の場合、CTは脳出血の検索に、MRIは脳梗塞の検索に有用です。四肢・関節疾患の場合、CTは骨の状態の把握に、MRIは靭帯や軟骨などの状態の把握に有用です。レントゲンやCTで分からなかった骨折でもMRI検査を行えば発見することができます。
また、薬を使わずに頭部の血管の画像を見ることができ、がんのときは、全身の骨転移した場所を見つけることができます。特に前立腺がんや乳がんの骨転移を見つけやすいです。
MRIの負担も軽減されました
いいことずくめのように思われるMRIですが、検査を受ける機械の中は狭く、暗く、検査時間が長いこともあり、精神的・肉体的に苦痛を伴います。
洛和会丸太町病院では患者さんの負担を軽くするため、今年3月から新しいMRIが稼動しています。新しいMRIでは検査中に映像が見られます。京都でこれを取り入れているところはあまりありません。色も鮮やかで、明るい雰囲気になりました。
TV検査とカテーテル検査
TV検査は、放射線を用いて体内にある器具が安全な位置にあるか確認するために行います。バリウムを飲む胃透視検査や注腸検査はこの検査です。
一方、TV検査と同様に血管内にカテーテルを挿入し、安全に検査が行えるかどうかの確認にも放射線が用いられます。
放射線って怖いもの?
胸部レントゲンを1枚撮るときに浴びる放射線は、飛行機に乗る際に浴びる量より少ないといわれています。赤道に近い中東では自然界の放射線の量が多く、1年間でCT1回分の被爆をしています。
外部から被爆した場合は、DNAに当たっても、そこに留まらずに通り抜けてしまい、傷ついてもすぐ修復されます。遺伝子が傷つかなければ、がんにはなりません。医療に使われている放射線はそういうレベルです。
検査できないケースもあります
検査で撮影できないケースを挙げておきます。対応していないペースメーカーや自動除細動器、体内神経刺激装置、人工内耳、脳圧可変式シャントバルブ、戦争・事故などによる金属片、磁石式の義歯、義眼、対応していない人工心臓弁などをつけている場合は検査できません。
検査できないケースが多くありますので、主治医の確認が必要です。
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