- 開催日:2016年5月18日
- 講師:洛和ヴィラ大山崎 主席係長 管理栄養士 田中 由里代(たなか ゆりよ)
はじめに
本日は、いつまでも元気で豊かな生活を送るために、高齢者の食事を中心にお話しします。
高齢者になると…
日本人の平均寿命は、男性が80.5歳、女性が86.3歳で、男性は世界第3位、女性は世界第1位の長寿国です。国民の5人に1人が65歳以上の超高齢社会です。
高齢者になると、次のようなことが起こりやすくなります。
- 食べる意欲の低下 ⇒摂取量の低下
- 喉の渇きを感じにくくなる ⇒脱水
- かむ力の低下 ⇒柔らかいものを好む・偏食
- 歯の欠損・義歯の不具合 ⇒柔らかいものを好む・偏食
- 飲み込む力の低下 ⇒むせる
- 味覚の低下 ⇒濃い味付けを好む
これらの結果、栄養のバランスが崩れやすくなります。以下、それぞれの項目と対策について、詳しくご説明します。
食べる意欲の低下
意欲が低下すれば、摂取量はどうしても減ってしまいます。それを防ぐには、次のことに気を付けましょう。
- 生活リズムにメリハリをつけて日々を過ごす。(朝昼が一緒にならないように、3食しっかり食べましょう)
- 活動する機会や出掛ける機会を増やす。
- 食事の時間を一定にする。
喉の渇きを感じにくくなる
脱水になると、さまざまな症状が出て、最悪の場合は生命の危機に陥ります。そうならないためには、喉が渇く前に、水分補給する習慣をつけましょう。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
1日に必要な水分量の目安:あなたの体重(kg)×水分25~30ml
例えば体重50kgの人なら、必要な水分の目安量は、50kg×25ml~30ml=1,250ml~1,500mlです。1,500mlは1.5Lです。食べ物の中にも水分は含まれていますが、それ以外に、上記の水分量をとりましょう。
かむ力の低下・歯の不具合
摂取量の低下につながるこれらの課題を解決するには、義歯(入れ歯)の調整や、食事の下準備にひと手間加えることが有効です。
具体的には、「1.繊維に直角に切る(繊維を断ち切る)」、「2.細かく切り目を入れる」、「3.隠し包丁を入れる」、「4.かみ切りにくい肉は叩いたり、皮は取り除いたり切り目を入れる」などの工夫をしましょう。
飲み込む力の低下
むせるのを防ぐためには、嚥下(飲み込み)に必要な筋肉を鍛えることや、食材に工夫することが有効です。
筋肉を鍛えるには、発音練習(パ・タ・カ・ラと大きな声で発音する。パンダのたからもの、という発音練習もあります)のほか、おしゃべりをしたり笑って過ごすこと、歌を歌うことも効果的です。
食材の工夫では、以下の「食材の特徴」を参考に、舌と上顎でつぶれるくらいを目安に煮込んだり、片栗粉やゼラチンでとろみをつけ、飲み込みやすくすることもいいでしょう。
味覚の低下
味覚には5味があります。甘味、塩味、酸味、苦味、旨味です。味覚が低下して濃い味付けを好むようになると、5味のうち甘味と塩味を多く使いがちです。多すぎる糖分や塩分摂取は、糖尿病や高血圧を引き起こす恐れがあります。対策としては、だしをとるなど、旨味を上手に生かして調理することなどがおすすめです。
高齢者が不足しがちな栄養素
高齢者はさまざまな栄養素が不足しがちです。それらの栄養素が不足すると起こる障害と、含まれている食材は以下の通りです。
バランスの良い食事
<ポイント>
- 主食+主菜+副菜の揃った食事をしましょう。
- 一日三食、朝昼夕を欠食せずに、しっかり食べましょう。
- ゆっくりと噛んで食べましょう。
- 一日350gの野菜を意識して食べましょう。
小鉢1つで約70gに相当します。一度に350gは厳しいので、毎食、小鉢1つ+αを心掛けましょう。 - 忘れがちな果物・乳製品は、意識して食べましょう
栄養必要量の目安
身体レベルI(一日のほとんどをいすに座っている生活)の方
身体レベルII(一日5時間程度は動いている生活)の場合は、男性で350kcal、女性で250 kcalを足してください。
おわりに
健康や運動に気を配り、食べる楽しみをいつまでも保ってください。体の変化を理解すると同時に、体に合った食事を続けるよう、心掛けましょう。
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