- 開催日:2017年11月9日
- 講師:洛和グループホーム西院 主席係長 介護支援専門員 山口 由香(やまぐち ゆか)
はじめに
本日は、認知症とは何かについて説明します。また、自分や身近な人が認知症になった場合の対応について、グループホームを中心にお話しします。
認知症とは
認知症は、何かの病気によって脳の神経細胞が壊れる(死んでしまったり、働きが悪くなる)ために起こる症状や状態のことを指します。認知症を引き起こす病気の種類によって、認知症の種類にも違いがあります。
老化によるもの忘れと、認知症は違います。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
三大認知症
認知症の中で一番多いのが、アルツハイマー型です。以下、レビー小体型、血管性、その他と続きます。
その他、の中には、治療によって治る認知症も含まれています。
認知症は、初期に気付くほど、効果的な治療や対応が可能です。「おかしいな」と思ったら、早めに専門家に相談することをお勧めします。
アルツハイマー型認知症
三大認知症の中で約半数を占めています。男性より女性が多い疾患です。
徐々に神経細胞が減少(脳の萎縮による)します。
進行は穏やかですが、気付いた時にはかなり進行していることも多いです。
レビー小体型認知症
三大認知症のうち約20%を占めています。
幻覚、妄想が現れます。
パーキンソン病に似た歩行障害が現れます。つまずきやすくなります。
脳血管性認知症
三大認知症の約20%を占めています。男性に多い疾患です。(脳梗塞や脳出血の部位が影響します)
発作を繰り返すたびに急激に進行します。
認知症の症状
認知症は、だれでにも起きる「中核症状」と、性格や環境によって異なる「周辺症状=BPSD」があります。
中核症状は、薬で進行をある程度、抑えることはできますが、完治は難しい症状です。
周辺症状は、個人差がありますが、ケアの仕方や環境の調整で、抑えることが可能です。
中核症状その1 見当識障害
見当識障害とは、
- 今がいつか:年月日や時間、季節
- ここはどこか:場所
- この人は誰か:人物
といったことが正しく認識できなくなることです。
認知症の進行に伴い、時間→場所→人、の順番で分からなくなります。
中核症状その2 実行機能障害
実行機能障害とは、行動するための段取りが取れず、実行できないことです。
例えば、料理ができなくなる、リモコンの使い方が分からなくなる…などです。
周辺症状について
周辺症状は、その人の性格や生活環境などによって、出てくる症状が違いますが、その人の周りに理解を示し、支えてくれる人がいれば、症状を軽減することができます。環境やケアが大切です。
脳の中で起こっていることなので、見た目には分かりにくく、周囲の理解を得にくいことが多いです。だからこそ、理解者が必要です。
認知症の人=何もできない・何もわからない人ではありません。できることはたくさんあります。感情も残っています。
認知症ケアについて
自分のことや自分の病気を理解してくれる人が側にいる。自分が慣れ親しんだ場所・自分の力が発揮できる場所があることが症状の緩和につながります。
認知症ケアの基本は、住み慣れた地域で行うことです。なじみの関係から早期発見につながることもあります。
どこで暮らすか
認知症になった場合、どこで暮らしたらいいでしょうか。以下のような暮らし方があります。
グループホーム(地域密着型サービス)とは
グループホームは、認知症ケアに特化したサービスです。入居には、以下のような条件があります。
- 医師から認知症と診断された方
- 常時の医療行為を必要としない方
- 要支援2または要介護1~5の方
グループホームの日常
少人数でなじみの関係が作りやすい:1ユニット当たり、最大9人の方を、日中おおよそ3人の職員が担当します。個室と共有スペースがあります。
住み慣れた地域で暮らせる:施設と同一の市町村に住民票がある方だけが入居できますので、入所者も家族も安心です。
家事、食事、買い物、散歩、趣味、入浴などの日常を、介護スタッフと共に行うことができます。(自立支援と、日常生活の充実)
家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、サービスが受けられます。
グループホームケアの特色
- 介護を受けるだけという一方向にとどめず、(例えば、調理の際に入所者さまから料理の工夫を教えていただく)双方向の働きを大切にしています。
- 一人一人の個性や価値観、生活リズムを尊重します。(例えば、朝ゆっくり寝ていたい方は寝ていただきます)。
- 能力を保持します。体力維持に体操や散歩なども積極的に行っています。
地域でのグループホームの役割
- 入居者と地域の方がつながって暮らせる「開かれたホーム」であること
地域のボランティア・認知症サポーター養成など人材交流の拠点を目指します。 - 地域における認知症の相談・支援の拠点であること
認知症の人が安心して生活できる地域づくりにも参画します。
グループホームの今後の課題
- サービスの質の向上:重度の認知症になられた方への対応。入居が長期になると、認知症ケアより身体介護が主になってくるため、ケアの内容を高めるのが課題です。看取りも、ご本人やご家族で希望される方が増えていますが、職員に医療従事者がいないことで対応が課題となるケースもあります。
- 人材の確保・定着・育成:介護職は心身の負担が大きい仕事です。人材確保と離職率を下げることが課題です。
- 認知度の向上・利用しやすさ:グループホームが身近にあることを知っていただき、認知症になっても安心、と思ってもらえる存在になることが夢です。
- 利用料金:高額なのがネックです。個室の広さや立地によって、利用料金は異なりますが、月々の支払いが総額で17万円~20数万円になる場合が多いです。
質疑応答から
Q 認知症の相談は、どこでできるのですか。
A 地域包括支援センター(高齢サポート)や、居宅介護サービスを行っている事業所には、ケアマネジャーがいて、ご相談に応じます。役所の窓口でも紹介してくれます。洛和会音羽リハビリテーション病院のように「もの忘れ外来」がある病院もあります。
Q グループホームの見学は可能ですか。
A はい、ぜひ見学にお越しください。グループホームによって、それぞれ個性がありますので、いろんなところを見られたらいいと思います。事前に電話して、予約してください。
Q 入居は、介護度によって分かれているのですか。
A 介護度で分けてはいません。既存の施設の場合、空いた部屋に入っていただくケースがほとんどです。
Q スタッフと入居者の割合は。
A 入居者さま9人に対し、平均3人の職員で対応します。行き届いたケアができていると思います。
Q 入居者同士のトラブルはありませんか。
A 集団生活ですので、人間関係上のトラブルがないとはいえませんが、何かあればスタッフが介入して、例えば食事の席を離すなどの対応をしています。暴力的な言動が出てきた場合は、薬の服用や、スタッフのケアで対応します。
Q 男性も女性も同じユニットに入居しているのですか。
A はい。男女混合です。もちろん部屋は個室です。男女比では女性のほうが多いです。男性がいると、女性同士より良い場合が多いです。お父さん役になってくれたりもします。
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