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医療 洛和会丸太町病院

全身麻酔で手術?私、ちゃんと目が覚めますか? ~全身麻酔の疑問に答えます~

投稿日:2017年11月16日 更新日:


はじめに

外科や整形外科などで全身麻酔が必要な手術を行う際、洛和会丸太町病院をはじめ多くの病院では、手術日より前に麻酔科が「術前外来」を行っています。本日は、術前外来でよく患者さんから出る質問を中心に、全身麻酔にまつわる疑問にお答えします。

術前外来って?

麻酔科で術前外来を行う、と聞くと、患者さんの中には「手術室で麻酔を試し打ちするの?」と思う方もいます。でも、そうではありません。術前外来は、普通の診察室で問診や検査をするだけですので、お気軽に来てください。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

なぜ、術前外来が必要?

麻酔をして手術を受けると聞いたとき、こんなことを思う人が多いです。
起きないのではないかと不安に思う人もいますし、遂に「寝るだけのことのためにわざわざ診察に来させるなんて」と怒る人もいます。

怒る人の中には、手術したら体のすべてが良くなると思う人もいます。仮面ライダーよろしく、できることなら、手術で不死身になれれば良いのですが…残念ながら手術や麻酔によるストレスで他の臓器にも負担がかかるのは避けられません。なので、術前に、採血やエコー、心電図など、いろんな検査をするのです。安全のために、異常があれば、そちらの治療を優先してから手術をすることもあります。

そもそも、全身麻酔ってなんなの?

麻酔には、4つの柱があります。

  • 鎮痛:痛みを取ること
  • 鎮静:寝ていること
  • 不動化:動かないこと。筋弛緩薬を入れて筋肉を動かないようにしています。呼吸に必要な筋肉の動きも止まるため、息も止まります。
  • 有害反射の抑制:体には不利になる反射を抑えます。

全身麻酔ってどんな感じ?

ドラマやマンガでは手術をされている間は左図のようなイメージですが実際は、右図のようなカンジです。

  • 息ができなくなるので、人工呼吸の管を入れています。
  • 眼球が乾くので、目を保護するテープを貼っています。
  • 誤嚥しないよう、胃液を吸う管を入れています。
  • 起き出したときに管をかまないよう、バイトブロックをかませています。

全身麻酔?死んじゃう!?起きない!?

昔と比べ、現在は検査器械や薬が発達しています。このため、全身麻酔による手術中もさまざまな方法で体の状態をチェックしながら安全を期しています。

  • モニターの発達:心電図や自動血圧計、酸素飽和度検査で、手術中の体の状態をチェックします。
  • 薬の発達:麻酔薬や循環薬は、日々進歩し改良されています。
  • 道具・器械の発達:人工呼吸の管を入れる「挿管」の器機がよくなってきました。

これらの発達の結果、全身麻酔の安全度は近年、ずいぶん向上しています。

モニターの発達とは?

明治時代に大阪陸軍臨時病院で行われた手術中の絵が残っています。点滴も、心電図もなく、手で脈を測っているだけです。

現在では、心電図の波形や血圧、酸素飽和度、呼吸の形、薬の濃度…などがモニター画面に表示され、これらをチェックしながら手術を行っています。

薬の発達とは?

昔の麻酔薬は、醒めにくく、血圧の管理薬も少なく管理が難しかったため、手術中に血圧が乱高下し、脳出血や脳梗塞を起こすリスクが多かったようです。

現在は、醒めやすい麻酔薬となっており、血圧を管理する薬も進歩しているため、手術中の血圧の乱高下を抑える技術も進歩しています。

道具の発達とは?

「力道山は、挿管困難で死亡したらしい」と言われています。
挿管は、麻酔をかけてから、首を後ろにそらせて管を入れ、声帯という指ほどの細い孔の中を通すのですが、なかには管を通すのが困難な人もいます。

挿管困難な人の特徴

  • 太っている
  • 顎がない
  • いびきをかく
  • 口が開かない
  • 首が動かない
  • 歯の問題(ぐらぐら、出っ歯)

現在は、内視鏡等道具の発達などで、これらの人も以前より挿管しやすくなりましたが、事前に確認し準備することが重要です。

これらのことを確認するためにも、術前診察が必要なのです。

具体的に気をつけたいこと

全身麻酔をして手術に臨む前に、次のようなことに気をつけましょう。

  • 薬の管理:血圧や糖尿病の薬など、普段飲まれるお薬はきちんと続けてください。中にはご自身の判断で薬をやめられる方がいますが、必ず医師に相談してください。
  • たばこはやめる:挿管すると気管が刺激され、痰が出やすくなります。たばこは管に痰が詰まる原因になりますので、ご自身のために、禁煙をおすすめしています。
  • 食事、アルコールなど体調管理を:肝機能の悪い人はアルコールはひかえましょう。食事の制限がある方は気をつけましょう。
  • 家族と話を:もちろん我々は最善の努力をしますが、残念ながら手術や麻酔のリスクはゼロにはなりません。ご家族としっかり説明を聞いて、分からないことがあればお尋ねください。皆でよりよい治療を目指しましょう。


プロフィール

洛和会丸太町病院 麻酔科
副部長
槇尾 真理(まきお まり)

  • 専門医認定・資格など
    麻酔科標榜医
    日本麻酔科学会麻酔科専門医

洛和会丸太町病院

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