- 開催日:2018年5月24日
- 講師:洛和会訪問看護ステーション東大路 主席係長 看護師 木全 千子(きまた ちこ)
はじめに
2000(平成12)年に介護保険が制定され、訪問看護が介護保険のサービスとして開始され、すでに18年が経過しました。訪問看護は言葉として皆さんに知られてきましたが、いまだに「どういうことをしてもらえるのですか?」という質問を受けることが少なくありません。訪問看護が必要なときは、どんな場合か。私が普段、行っている訪問看護について理解を深めていただき、訪問看護をスムーズに利用していただけるように本日は話を進めたいと思います。
訪問看護とは?
看護が必要な在宅療養者を看護師と保健師、理学療法士などが訪問し、主治医の指示に基づいて医療上のケアや必要な診療の補助を行うと定義されています。
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訪問看護の内容
まず、在宅療養されている利用者さんの症状を正しくつかみ、障害の程度の病状確認など健康管理に当たるのが最大の仕事です。また、日ごろ家庭で使っているカテーテルなどの医療器具の点検や管理も大きな役目です。家族の方が行う療養や、介護の方法を指導するほか、リハビリテーションの仕方も指導します。床ずれや傷の手当ても必要です。保健、福祉サービスの活用支援として、内服薬の管理のほか、食事や水分補給、栄養管理、排せつなど、利用者さんが快適に生活できるように助言をします。
病状、障害の観察、健康管理
利用者さんの体温や血圧、脈拍、ときには酸素飽和度を測定します。人工透析を行っている利用者さんの場合は必要に応じて、体重測定も行います。聴診器で呼吸の音や腸の動きなどを聴きます。このため、私たち訪問看護師はかばんに聴診器や血圧計、体温計などの測定に必要な機材を入れています。この他、むくみや皮膚トラブルの有無の観察も欠かせません。全身状態を観察したうえで、その他の症状の有無や程度を確認することも大切です。
医療器具の管理
近年、鼻や胃ろうなどから注入食を胃に流すカテーテルをお使いのケースも多いようです。首の周辺から高カロリーの栄養分を取る点滴を行う場合もあります。尿道カテーテルを使っている方、在宅で酸素の吸入をする方、人工呼吸器を使う場合もあります。ご家族の不安も大きいと思いますが、人工肛門や人工膀胱など、皮膚の調子を確かめ、安全にお使いいただけるように、日々の確認が大事になります。こうした機材の安全確認も私たちの仕事です。
療養・看護・介護方法の指導
初めて家庭で介護をされる人も多いことでしょう。病気とうまく付き合いながら、「こんな生活がしたい」「こんなことができたら」という利用者さんの夢を少しでも実現するようにお手伝いするのは訪問看護師の仕事です。介護者の負担が少しでも少なくなることが大事です。もちろん、ご本人ができることは継続して続けられるよう、働きかけが必要です。年齢とともに、つえや車いす、介護用ベッドなどの福祉用品も必要になるでしょう。看護師の経験に基づいて、適切な品選びの参考になる助言も行います。
リハビリテーション
利用者さんの状態に合わせて、リハビリテーションをお手伝いします。足の力が弱くなってきたと感じられる方には、筋力アップを目指した運動から始めます。これには、いすが一脚あれば簡単です。患者さんは、いすに腰かけて片脚を膝の高さまで交互に伸ばします。足の筋力アップを目指した簡単なリハビリテーションで、歩行練習を始めるには最適です。楽しく練習することが大切です。
口から食べた物が誤って気管に入ってしまい誤嚥(ごえん)性肺炎を心配される人も多いでしょう。飲み込みが悪くなってきた方には、発声練習を兼ねて口や舌の運動が有効だと思います。
床ずれや創傷の処置
床ずれの状態に合わせた処置を行い、必要に応じてご家族へ処置の仕方を指導します。床ずれがひどくなってくると、主治医の指示を得て、毎日の訪問も可能になります。症状が悪化しないように、体圧を分散する仕組みのマットレスを使うほか、自動で体の向きを変えるエアマットをお使いになることをお勧めしています。床ずれを起こさないように栄養摂取を見直し、日中の運動量を確認し、皮膚の保湿や清潔ケアを進めて、皮膚トラブルを防ぐのが肝要です。
まず、家族が健康でこそ
介護しているご家族自身が健康でないと、利用者さんの家庭での生活が困難になってきます。そのため、訪問看護師はご家族の健康状態についても相談にのります。介護者の負担を軽減するため、訪問介護や通所介護、ショートステイなど、介護サービスの活用の仕方について支援します。ご家族とケアマネジャーとの連携も大切になります。
食事や水分補給、排せつの支援
利用者さんの食事の量が少なくなってきたら、少ない量でも効果的にカロリーが取れるような食事内容を指導します。飲み込みが悪くなり、むせることが多くなると、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。食物に「とろみ」をつけるほか、食事は一口大の大きさにすることも大事です。食事内容を変えてみることも提案します。排便が困難なときは下剤の調整や摘便、浣腸などで排便を促します。全身状態に合わせた入浴介助のほか、足浴や手浴、洗髪、シャワーをお手伝いします。
内服薬の管理
お薬の飲み忘れが多くなっていませんか。お薬カレンダーで確認するほか、1日分のお薬を袋で管理するなど、ご家族と相談しながら薬の服用方法を検討しましょう。薬の内容について、主治医と相談し、1日に飲む回数を減らせないか、朝夕の服用を朝1回にまとめられないかなどを相談することも可能です。
ターミナルケア
「看取り」の支援も訪問看護の大切な役割です。老衰や悪性腫瘍などによって、終末期を自宅で迎える方には、ご家族や利用者さんが望まれるような「最期」の支援をします。亡くなられるまでの身体状態の変化について、精神的な不安を取り除き、悲嘆の軽減を図るため、医師や関係機関と連携して24時間体制で寄り添います。
実際のご利用のために
利用者さんが訪問介護をご利用になる際は、かかりつけ医と訪問看護ステーションが関わります。要介護(要支援1~2)、要介護(1~5)の認定には居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)が行いますが、介護保険を使わずに、医療保険で支給を受ける方法もありますので、かかりつけ医などと相談してください。
まとめ
訪問看護の狙いは、生活と医療の両面サポートです。ご家庭を訪問し、療養されている利用者さんと自宅で介護される方の不安や負担、困難な状態を取り除きます。このために、看護師をはじめ、医師、保健師、理学療法士、ケアマネジャー、福祉用具、薬剤師など、さまざまな職種が連携し、より良いサービスを提供していきます。
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