- 開催日:2019年2月21日
- 講師:丸太町リハビリテーションクリニック リハビリテーション部 副係長
理学療法士 出口 真貴(でぐち まさき)
はじめに
私は丸太町リハビリテーションクリニックで理学療法士をしています。施設で運動やリハビリに励んでおられる利用者さんへの運動指導や運動器具を用いたリハビリや個人指導を行っています。本日は、一般の方が健康増進のために必要な栄養の取り方と自宅でできる筋トレやストレッチの方法をお話ししたいと思います。
体づくりに必要な栄養とは
生きているだけで消費されるカロリーを基礎代謝量といい、身長と体重、筋肉量、脂肪量から計算します。簡単に言えば、摂取カロリーが消費カロリーを上回れば体重は増加し、逆に消費カロリーを下回れば痩せる計算です。双方が等しければ、体重は維持されます。最近の家庭用体重計でも、基礎代謝量の大まかな値は示されます。
「インボディ(InBody)」という機器を用いれば詳細に測定できます。私が勤務する丸太町リハビリテーションクリニックにも設置しています。この機器は、体内の成分分析を行うもので、乗るだけで基礎代謝量だけではなく、筋肉量や体脂肪率、体型評価、体の部位別筋肉脂肪バランスまで計測できます。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
1日の総消費カロリーを知ろう
1日の総消費カロリーは基礎代謝量×生活運動強度で算出することができます。
散歩や買い物など比較的ゆっくりした1時間程度の歩行のほか、大部分は座位での読書や勉強、テレビ鑑賞などで過ごす人は「軽い」、通勤などで2時間程度の歩行や接客、家事などで過ごし、大部分が座位での事務作業や談話をしている場合は「やや低い」、1日に1時間程度は早歩きやサイクリングなど比較的強い身体活動をしている場合は「適度」、さらに1日1時間程度の激しいトレーニング、木材の運搬や農耕作業に従事している場合は「高い」に該当します。
基礎代謝に掛ける係数は「低い」で1.3、「高い」は1.9です。あくまで目安の数字ですが、自分の日常生活に必要なカロリーですので知っておいてください。
肝心な栄養はタンパク質
栄養素の中で、体づくりに最も必要とされるのがタンパク質です。タンパク質が不足すると、筋肉量が減少し、肌や髪の張りがなくなり、爪が弱くなります。筋肉量を現状維持するには、体重(kg)の1~2倍(g)のタンパク質を1日に取る必要があります。
体重50kgの女性が現状の筋肉量を維持する場合は、タンパク質含有量からいうと、鶏もも肉を1日に300g摂取することになります。 しかし、これは現実的には、かなり難しいことで不足分はサプリメントで補うことをオススメします。
プロテインの誤ったイメージ
飲むだけで筋肉がつく筋肉増強剤と勘違いされがちなのが、プロテインです。
プロテインは、牛乳から脂質と糖質を取り除いたもので、牛乳の良質な成分だけを粉末状に加工したものです。超一流のスポーツ選手が飲んでいるのも事実です。太りそうにも思いますが、1回分約150kcalで、缶ビール1本350mlと同じです。肉や魚と比べて脂質や糖質も低く、吸収も早く、運動後に摂取することに適しています。
ただし、栄養の摂取はあくまで食品から摂取するのが重要で、食事の不足分をサプリメントで補うのが基本です。また、タンパク質摂取による腎臓への悪影響も指摘され、タンパク質の1日あたりの摂取量は体重1kgあたり2g以下にとどめることが推奨されています。プロテインでタンパク質を補う際の限度量は主治医に相談してください。
ダイエットは栄養のバランスを考えて
ダイエットには糖質を制限する糖質制限ダイエットなどがあります。糖質の摂取を1日50gまでに制限し、脂質燃焼効率を向上させるものです。しかし、50gを超える中途半端な糖質制限は筋肉の分解を促進し、低血糖による体調不良を招きます。
一方、有酸素運動によるダイエットという方法もあります。体重50kgの女性が5kmを走ると約250kcalを消費します。体脂肪を1kg落とすのには約7200kcalの消費が必要です。ランニングで体脂肪を1kg落とすには、総距離144kmも走らなければなりません。とても走れませんよね。そこで、筋トレで筋肉を付けて、基礎代謝量を向上させることが長期的にリバウンドしにくい体づくりに重要なのです。
ご紹介したいのが、ボディビルダーの行っている体重管理方法です。タンパク質(Protein)、糖質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の3つに分類するマクロ管理法(PFCバランス)という方法です。タンパク質は肉や魚、卵、乳製品で、筋肉や内臓、肌、髪、爪などの栄養源になります。脂質は関節の健康や脳の働き、ホルモン分泌、脂肪燃焼に欠かせません。オリーブオイルやナッツ類、チーズなどに多く含まれています。炭水化物は体や脳を動かすエネルギー源で、穀物や麺類、果物です。タンパク質量を維持しながら、脂質もしくは炭水化物を減らすのがポイントです。
自宅でできるトレーニング
もし、あなたのおなかが出てきたらどうしますか。まず、腹筋運動でしょうか。そもそも部分痩せはあり得ないのです。筋肉の体積を比べると、最も大きいのは太もも前側の大腿四頭筋、お尻の大殿筋などです。腹筋は大腿四頭筋の1/6以下の体積しかありません。まずは、体積の大きい筋肉を優先的に鍛えて基礎代謝量を向上させることが近道です。
では、簡単に自宅でもできるトレーニングを紹介しましょう。まずは、胸と腕、肩を鍛える腕立て伏せからです。通常は下のスライドの写真の左側のようにしますが、上体を持ち上げるのが難しい場合は、右側のように膝から下を床に付けて行うことも可能です。
力を入れるときは素早く、戻るときは時間をかけて
次はスクワットです。お尻と太ももを鍛えるトレーニングです。両方の手のひらを胸に当て、肩幅より少し広い歩幅で直立姿勢をとります。背中が曲がらないように気を付け、まっすぐに腰を下ろします。約3秒かけてしゃがみます。戻るときには、素早く立ち上がります。10回×3セットで行い、休憩を1分取ります。10回が簡単であれば、腰を下ろす時間を5秒以上かけてください。
このほか、かかとを上げる運動や、うつぶせになって肩甲骨周りの筋肉を内側に寄せる運動も試してください。肩甲骨周囲の筋肉を鍛えると、猫背になることを予防できます。このほか、足幅を1歩より少し広く取り、足を前後に広げてふくらはぎをまっすぐ伸ばすのストレッチも効果的です。
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