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医療 洛和会音羽病院

本当にこわいの?! 糖尿病 ~あなたにもできる生活習慣改善のヒント~

投稿日:2018年3月9日 更新日:


 はじめに

糖尿病は、適切にコントロールすれば一般の人と変わらない生活が送れますが、放置したり治療を途中でやめてしまうと大変な病気を引き起こします。生活習慣と大きく関わっていますので、本日は糖尿病の発症や悪化を防ぐ生活習慣改善のヒントについてお話しします。

糖尿病と生活習慣

統計によると、国内の糖尿病の患者さまは、1950年ごろはほとんど見当たりませんでした。それが1960年ごろから急増を始め、2014年調査では316万人を突破しました。厚生労働省によると、現在、糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人と推計されています。この間、国民のエネルギー摂取量自体は変わっていませんが、エネルギー摂取量に占める脂肪の割合が急増しています。自動車の保有台数も同様に急増しました。これらのことから、脂肪の取りすぎや運動不足が糖尿病の増加と関係しているとみられています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

糖尿病を放置しておくと…

糖尿病を発症後、対応や治療しないまま進行すると、3~5年後には神経障害が出ます。さらに放置すると、目や腎臓がやられ、やがて糖尿病性網膜症や腎症が発症します。このほかにも心血管障害や歯周病などの合併症があり、糖尿病の放置はとても危険です。

でも、治療を続けると…

一方で、糖尿病の研究が進むことによって、診断や治療法の開発が進みました。その結果、糖尿病に関係する合併症は激減してきました。米国の学会で発表されたデータは以下の通りです。

このように心筋梗塞や脳梗塞、足の切断は大幅に改善しましたが、腎不全は改善が3割未満に留まっています。この分野での対策が今後、さらに必要とされています。

セルフチェックしてみましょう

(以下の説明は、金沢大学糖尿病教育・治療チームを母体としたNPO法人・Team DiETの資料を参考にさせていただきました)

糖尿病になりやすい生活習慣がどんなものか、セルフチェックしてみましょう。以下の8つの項目をチェックしてください。

  1. あまり食べていないつもりなのに太ってしまう。
  2. 料理は大皿に盛りつける。
  3. 1日1食または2食になることがある。
  4. 夕食を食べ終えてから寝るまでの時間は2時間以内である。
  5. 暇があると何かを食べている。
  6. 果物やお菓子がいつもそばにある。
  7. お酒は毎日飲む。
  8. お酒を飲み過ぎてしまうことが多い。

生活習慣を改善しよう

セルフチェックの結果と改善方法は以下の通りです。

1・2をチェックした方:食事量、バランスに問題があります。バランスを見直してみましょう。食事の適量が簡単にわかる「ランチョンマット法」がお勧めです。

3・4をチェックした方:食事時間に問題がありそうです。人のからだは食事の時間が8時間以上空くと基礎代謝が低下するといわれています。特に朝食を抜いている方は要注意です。

5・6をチェックした方:間食習慣に問題がありそうです。是正する方法には「空腹を肯定的にとらえる」「衝動を減らす」「置き換える」といった方法があります。

7・8をチェックした方:飲酒習慣に問題がありそうです。お酒の適量は日本酒に換算して1日1合です。お酒の選び方や飲み方を工夫してはいかがでしょうか。

体重を減らすには

減量で大事なのは、筋肉量は減らさずに、体脂肪を減らすことです。
体脂肪1kgに含まれるエネルギー量は約7,000kcalです。1カ月で体重を1㎏減らそうとすれば、1日に減らすべきカロリーは、7,000÷30で、約250kcalとなります。

250kcalに相当するのは:ご飯なら150g(茶碗に軽く1杯)、大福なら1個、ビールなら大びん1本です。
運動で減らそうとすれば、ウオーキングなら70分、サイクリングなら60分、ジョギングなら35分です。

外食でも手軽にカロリーダウン

外食の際に減量するには、次のような方法もあります。

  • カツサンド(460kcal)⇒レタスサンド(190kcal)に変えれば270kcal減らせます。
  • かつ丼(900kcal)⇒鉄火丼(650kcal)で、250kcalダウン。
  • カルボナーラ(830kcal)⇒ペペロンチーノ(560kcal)で、270kcalダウン。
  • 焼き鳥・皮(380kcal)⇒焼き鳥・つくね(130kcal)で250kcalダウン。

食事の適量を知ろう

ランチョンマット法を紹介します。

A3サイズ(30cm×40cm)のランチョンマットを用意し、その上に主食1皿、主菜1皿、副菜2~3皿(1皿はデザートでもよい)をマットからはみ出さないように置きます。適量でバランスの整った食事となります。

ご飯と同じ仲間の食材や料理

ご飯に含まれる糖質は、以下のような食材や料理にも含まれています。食事の際、重ならないようにとると糖質の過剰摂取を防げます。

コロッケ、コーンスープ、フライドポテト、ポテトサラダ、トウモロコシ、ジャガイモ、カボチャ、とろろいも、サトイモ、レンコン、はるさめ、もち、パン、餃子の皮、筑前煮、ラーメン、パン、たこやき、うどん、そば、肉じゃが、大学いも、クリきんとん…。

お肉を取ろう

体重のコントロールだけでなく、筋肉量の維持が大切です。お肉を取りましょう。お肉には共通して、体を作る材料となる必須アミノ酸がバランスよく含まれており、筋肉の素です。

また、体内でエネルギーを生み出す際に補助するビタミンのナイアシンが豊富に含まれており、パワーの素です。

牛肉には体脂肪が燃焼される際に消費されるカルニチン、豚肉には疲労回復効果が期待できるビタミンB1が豊富に含まれています。鶏肉には、牛肉や豚肉と比べて動脈硬化の引き金となる飽和脂肪酸が少ないという特長があります。

魚も食べましょう

肉と魚を順序良く食べることもお勧めです。魚には、

  • 食後の急な血糖上昇を抑える
  • 体脂肪の燃焼が促進される
  • 良質な油脂が動脈硬化の予防になる

といった長所があります。
1日あたりの魚の適量は、80~120gで、「手のひら」に納まるぐらいです。魚料理は手間がかかるので敬遠されがちですが、サバの水煮など、缶詰やレトルトパウチを利用するのもいいでしょう。

カロリーゼロなら大丈夫?

清涼飲料水などの表示をよく見てください。

商品によっては、実際にはゼロでないものもあります。食品表示基準法では、一定の基準以下であれば「ゼロ」や「オフ」と表示できるよう定められているからです。

  • ノンカロリー/カロリーゼロ:100ml当たり、5kcal未満であればOK。
  • カロリーオフ:100 ml当たり、20kcal以上低減ならOK。

間食がやめられないときは

以下の3つを試してみましょう。

空腹感を肯定的に捉える:長寿や若返りに関与する遺伝子が、空腹をきっかけに活性化するとの説があります。

間食したい衝動をそらす:間食したい衝動が起きたら、別の行動をとります。歯磨き、うがい、ストレッチなどをしている間に、間食の衝動がおさまることがあります。

置き換える:同じ間食でも、カロリーや糖質の少ない物を選択します。チーズやナッツ類、0(ゼロ)カロリー食品などがお勧めです。

食事メモを取りましょう

食事を客観的に振り返ることで、食べたい気持ちにブレーキをかける効果があります。日記の要領で、以下のようにやってみてください。

  • 口に入れたものをすべてメモする。
  • 口に入れたものと時間を1セットにしてメモする。
  • 食事以外に体重や、その時の気持ちをメモする。

食事メモのコツは、最初から長く続けようと思わないことです。3日坊主でも、10回やれば1カ月となります。

週に1回、食事内容を客観的に振り返ります。スマートフォンのアプリを利用する方法もあります。

お酒の適量を知ろう

適量は純アルコール換算で1日20gです。これは、日本酒なら1合、ビールなら中びん1本、ワインならグラス1杯、焼酎なら半合、ウイスキーなら60mlに相当します。

夕食を食べ過ぎたり、朝食を抜きがちになる方へ

夜間はカロリー消費を高めるホルモンであるオレキシンの分泌が低下します。消費しきれないエネルギーは、脂肪組織に貯蔵され、肥満を助長します。朝食の欠食は、消費エネルギーの減少につながり、さらに肥満を助長します。血糖や中性脂肪が上昇しやすく、メタボリックシンドロームになりやすいです。

仕事の関係などで、夕食が遅くならざるを得ない人の場合は、分割食をお勧めします。家で夕食が午後9時ぐらいになる人は、5時ごろに職場で軽いサンドイッチなどを食べ、帰宅後の食事量を減らすのもよいでしょう。

妊婦の方にも分割食はお勧めです。妊娠糖尿病は、胎盤からインシュリンの出を悪くする物質が出るために起きます。1日4~5回に分けて小刻みに食事をとることで、血糖値の上昇を防ぐことができます。

1日1,600kcalの食事って

平均的な生活をしている方では、1日1,600kcal前後が食事量として適当と考えられます。

1,600kcalの食事例を以下にご紹介します。ご自宅の食事と比べてください。

  • 朝食:食パン(6枚切り)2枚、ゆで卵、野菜サラダ、牛乳200ml。
  • 昼食:ご飯150g、鮭の塩焼き、チンゲン菜のおひたし、こんにゃくとシイタケの煮物、りんご1/4個。
  • 夕食:ご飯150g、肉野菜炒め、豆腐の野菜あんかけ、大根なます、みかん1個。

糖尿病とがんのリスク

糖尿病になると、発がんのリスクが以下のようになります。

  • 大腸がん 1.3倍
  • 肝がん 2.5倍
  • 膵がん 1.8倍
  • 前立腺がん 0.8倍

運動で予防できるがん

確実:大腸(結腸)がん
ほぼ確実:閉経後乳がん、子宮体がん

運動するなら…

運動は、家の中でもできます。

「ウオーキングや水泳などの有酸素運動が大切」といわれてきましたが、家でできる“筋トレ”(レジスタンス運動)も大切なことが明らかになってきました。

若い人が行う、重いバーベルや鉄アレイを用いたスクワットは、高齢者には不向きです。負荷が加重にならない程度で、いすや壁、1kg程度の鉄アレイを利用して運動してください。

HbA1cの目標値は

HbA1cとは、血液中のブドウ糖の量を示す指標で、過去1~2カ月の血糖の状態が分かります。血糖値は、検査時点での血糖状態のことで、糖尿病治療はこの両者を参考にします。

血糖のコントロール目標は、年齢によって異なりますが、元気な高齢者の場合、HbA1cの目標値は7%未満です。薬でコントロールしている65歳~75歳の人は6.5~7.5%未満、75歳以上は7.0~8.0%未満です。

血糖値の正常範囲は

血糖値は食事との関係で変動します。空腹時の血糖値は、70~110が正常範囲です。コンビニの“セブン イレブン”と同じだ、と覚えておくのも良いでしょう。

低血糖状態になると、さまざまな症状が出ますが、子どもと大人では異なります。

途中で投げ出さないで

最後に、治療者として、一番大切だと思うことをお話しします。それは

治療を中断してはいけない

ということです。

糖尿病と診断されても、初期の段階では自覚症状がありません。
このため、いったん病院にかかっても、途中で受診をやめてしまう人が少なからずいます。その結果、気付いた時には、重篤な症状となっている場合が多いのです。
糖尿病は、軽いうちに気付いて適切な治療を続ければ、コントロールが可能です。取り返しのつかない状態にならないよう、糖尿病と診断された方は、治療の継続を忘れないでください。


プロフィール

洛和会音羽病院 糖尿病・内分泌・生活習慣病センター センター長 兼 糖尿病内科 部長
土居 健太郎(どい けんたろう)

  • 専門領域
    糖尿病、内分泌疾患、生活習慣病
  • 専門医認定・資格など
    日本内科学会認定内科医/総合内科専門医/指導医/近畿支部評議員
    日本糖尿病学会専門医/研修指導医/近畿支部評議員
    日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医/指導医/評議員
    日本糖尿病協会療養指導医
    日本静脈経腸栄養学会TNT研修会修了
    京都大学医学部臨床教授
    臨床研修指導医
    京都大学医学部非常勤講師

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